お前がまず、やるべきこと・・・。

この大陸にはお前と同じ、ZEROを止める存在である人間つまり、

歯車である存在の人間があと2人いる。

それを集めることだよ。

え? どうやって集めるのかって?

彼らには共通点があるんだよ、リョウ。

それは・・・・

 

第九章             サクラ舞う時 前編

 

 

レオナと別れて3日が過ぎた・・。

リョウは相変わらず首都に留まっていた。

「おばぁさんは、どうして、一緒に行動してくれないんですか?

・・貴方が一緒なら、とても心強いのに・・。」

「そりゃぁ、リョウ、私も一緒にいてお前を手助けしてあげたいさ・・。

でもね、私は手助けする事が出来ないのさ。とても心苦しいが・・・。

実は、ここにいる事も既にしてはいけないことなんだよ・・。

私はお前が首都に着くと、これからお前にすべきことを伝えるように仲介人を設置していたんだ。

でも・・
ZEROの手下に先手を打たれて奴は殺されてしまったらしい・・。

だから私がこっそりお前に伝えにきたという訳さ。」


 

3日前交わした老婆との会話が蘇る。

レオナと戦った黒装束の兵士たち・・あれは
ZEROの手下だという。

邪気が具現化したものらしい・・・。

普通の黒い塊の邪気とちがった、ちゃんと意思を持って言葉も話せるもの・・・。

ランク的にもそこそこ高い方だという。

ちなみに邪気にランク(簡単にいうと強さともいう)ZEROが最高なのはもちろん、下から、

ただの塊、魔物(小)形、魔物(大)形、人型、人型(能力有り)、ZEROというランクだと言われた。

ただの塊は人間に寄生して活動するらしい。

そして、老婆はリョウに自分がするべきことを告げて去ってしまった。

 

「・・・仲間を集めろっていっても・・・。」

リョウはため息をついた。

この首都を探せと言っているのではない。

この大陸にいると老婆は言った。大陸・・・だ。

こんなに広い大陸を探せ・・と。

時間はどのくらいかかるのだろうか・・。

こうしている間にもZEROは動き始めている。

でも決めたのだ。そのZEROを止めると。

ZEROを止めるには「歯車」が必要不可欠。

だから絶対に見つけなければならないのだ。

自分と同じ、運命の歯車という存在・・・・。

仲間がいる、と分かった時、正直リョウは嬉しかった。

一人で
ZEROを止めるのはどうしようもなく不安で、とても心細かったから・・・。

どんな人なんだろう・・・。

これからの旅、一人じゃなくなるのがとても嬉しい。

心強い。

首都内をそれとなく探してみたけれど、こんなに広いのだ・・。

それにいきなり探せといわれても・・。

ただの捜索方法じゃ駄目だ・・・。

もっと効率のいい方法で探さなければ。

「まさか・・・貴方は運命の歯車ですか? なんて聞けないしなぁ・・。」

自分がそんな存在だと知っている可能性も低い。

リョウだって知らなかった。

もし、見つかったとしてもこんな話、信じてくれるだろうか・・・。

リョウはあの老婆と違い何の力も持っていない。

邪気やZEROの事を話しても信じてもらえないかもしれない・・・。

 

実際、リョウはレオナが一番可能性があるのではないかと思う・・。

彼女は
ZEROの存在も知っていたし、ZEROの手下にも狙われていた。

彼女が歯車だとしたら納得がいく。

リョウだって自分が歯車だから狙われていたのだ。

しかし、彼女が歯車なら何故老婆は彼女が去るのを止めなかったのだろう・・・。

考えた末、リョウはレオナを探すことに決めた。

彼女は首都から出て東に向かった。

東にはいくつか町もあるし、少し離れるが森もある・・。

よしっ!! と決めた時、お腹が鳴った・・。

そういえば、朝御飯を食べていない・・・。

首都の物価は比較的高い。

しかし、何かを食べないと体が持ちそうではないのは分かる。

でもお金をあんまり無駄に出来ないしなぁ・・・。

今のとこ、老婆に貰ったお金しかないのだ。

このお金がある間になにか稼ぎ方法を見つけておかなくては・・・。

そう思ってお腹を軽くさすってやる。

ほら、鳴くな。

美味しいものを考えるんだ。

想像力で空腹を満たすんだ。

その時だった。

 

「なんだい? その悲しそうなお腹の音は・・・。」

ふいに、声をかけられた。

 

 

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